2009年9月6日日曜日

■未利用材の徹底利用(事例)

われわれが検討している方向とほぼ同様な事例がありました。


(貼り付け)

バイオマスタウン岡山県真庭市の挑戦

未利用材の徹底利用 こだわりが生むイノベーション



岡山県北部の真庭市は、山間部の恵まれた森林資源を生かした地域の活性化に取り組んでいる。目指すのは日本の木質バイオマス基地である。今回焦点を当てるのは、徹底した残材、未利用材の活用だ。実は製材所では大量の木くずが発生する。また、かつて山には間伐材や風倒木などの未利用材が放置されていた実態もあった。これらを有効に集収する仕組みづくりと、燃料や素材として使い切る工夫は、日本が環境問題や資源、エネルギー問題に向き合っていくうえで貴重なヒントを与えてくれる。

地域ぐるみの徹底活用

 岡山県真庭市の木材生産の内訳を見ると、その工場残材のボリュームが理解できる。原木の仕入れ量が年間20万m3に対して製材所からの出荷量が12万m3。その差の8万m3が木くずやかんなくずである。

 これら大量の残材を廃棄するのではなく活用しようという試みが始まっている。銘建工業(本社・真庭市)や牧野木材工業(本社・真庭市)などで進めている燃料としての活用だ。

 真庭市にはこれら製材所などから出る工場残材に加えて、樹木の伐採などで発生する林地残材や間伐材、台風による風倒木など、未利用木材も大量に存在している。2006年の統計では、真庭の山々に放置されているその量は約5万7000tに及ぶという。

 こうしたなか、工場残材を資源として生かすこれまでの工夫に加えて、山に眠る林地残材や間伐材などもバイオマス資源として活用しようという取り組みが、この春、新たにスタートした。それらを山から運び出すことで、利用できる資源は増え、同時に森は整っていく。バイオマス活用と同時に森林整備にとっても良い循環を生み出そうというわけだ。

 真庭市の木質バイオマス資源を1カ所に集めてストックする場として、3億3000万円を投じて作られたのが、1万551m2の敷地をもつバイオマス集積基地。今年3月に完成したばかりだが、すでに敷地内には、地元の市場で取り引きされたものや周辺の山から運び出されたものなど、倒木や林地残材、端材などがいくつもの山になっている。

 この事業の経営主体は2004年に設立された2つの地域会社「真庭バイオエネルギー」(本社・真庭市)と「真庭バイオマテリアル」(本社・真庭市)だ。基地の運営が事業として成り立つのはもう少し先になりそうだが、きちんと機能した暁には、ここが真庭市の「静脈物流(廃棄物やリサイクルに関わる物資の輸送)」の拠点になる。年間5610tのバイオマス利用によって、重油1615キロリットルを削減した実績(新エネルギー・産業技術総合開発機構の「真庭市木質バイオマス活用地域エネルギー循環システム化実験事業」における平成20年度実績)をもつ真庭バイオマスタウンの底力が、ここで試される。


未利用材の徹底利用 こだわりが生むイノベーション

林地残材が“宝の山”に変わる

 このバイオマス集積基地には、誰でも木材を持ち込むことができる。持ち込まれた材は、その場で計量して買い取られる。引き取り価格は1tあたり3000円。ヒノキやザツなど種類によってはやや高値が設定されている。引き取る木材は50cm以上のもの。これ以上小さいと、機械で切る際に不都合があるからだ。

 毎日のように、林地残材を積んだトラックが山仕事の帰りに立ち寄る。計量はトラックごと行われ、積荷を下した後に再計量し、持ち込まれた材の重さを計量差から算出する。放置されていた林地残材などがお金に換わり、山から運び出した労力が報われるという明快なシステムだ。軽トラック1杯の材の買い取り額は、だいたい2000~2500円だという。

木質バイオマスとして活用されるのを待つ“宝の山”
木質バイオマスとして活用されるのを待つ“宝の山”

 樹皮を粉砕する機械をもつ同施設だが、今のところ樹皮は粉砕せず堆肥として利用している。木材乾燥用ボイラーを何台も持っているような製材所は樹皮を自分のところで燃やせるが、そうでない小規模製材所は、処理にお金のかかる樹皮を常に持て余している。ここに持ってくれば、処理料が要らず、逆にお金を受け取ることができる。

 樹皮以外の端材や木くずは破砕して粒子にし、燃料になるペレット、燃料や紙の原料になるチップに加工している。ここに集まる木質バイオマスは、そのままでは流通ルートに乗らない。この集積基地で、集まった“原材料”をまず均一にし、単位ごとに扱える“素材”に加工する。そして新たな需要を探っている。

 需要側から見ると、大量の木質バイオマスのストックが、利用しやすい形で準備されていることになる。手間をかけずに木質バイオマス資源という宝の山を活用できる。供給側と手を組むことで、真庭地域が古くからの木材との付き合いで蓄積してきた「知識」という素材も併せて、新商品開発に役立てることが可能となる。バイオマス利用にとって需要と供給の双方に便利で有意義な仕組みが、山村に登場したというわけだ。

 基地と隣接する倉庫には、ペレット1m3(約600kg)入りの大袋が並ぶ。真庭でつくられたペレットは、ここから全国に販売されている。2008年度のペレット出荷実績は1万t、売り上げ額は約2億2700万円だった。


未利用材の徹底利用 こだわりが生むイノベーション

バイオマス活用のコンサルティング

 真庭のペレット販売の方針は明確だ。まず目指すのはバイオマス市場の活性化。だからこそ、出荷先地域のペレットを安さで負かして、自分たちだけ得をしようという発想はまったくない。むしろ販売先を選定し、運送手段の効率を考え、なるべく出荷先の地域に利益を落とせるよう工夫している。それぞれの地域のバイオマス業界を元気づけ、バイオマス商品をさらに普及させて山に十分な利益が還るようにする。それが最終目的なのだ。

 商品としては、業務用ペレットのほか、一般家庭用ペレットも扱っている。その用途は燃料に限らない。たとえば、家畜小屋の敷き藁(わら)の代わりにもなる。ペット用には、ペレットを少量で袋詰めしたものが商品化されている。今後、さらに流通商品を増やしていくために、模索と挑戦の日々が続いている。

 一方で、山村の資源を売る企業として、地域住民への貢献も忘れてはいない。家庭にいながら地元の産物に関われるような雇用を創出することもその一つ。たとえば、ペット用ペレットの袋詰めやヒノキのチップと炭を詰めて作るブーツキーパー用の布袋の作製作業は内職化して、バイオマス産業を町に浸透させ、活性化する工夫をしている。

 基地では、技術的に、より先端を目指した取り組みも始まっている。たとえば、木をペレットやチップよりもずっと細かく粉砕し、マテリアルとしての需要を探るのだ。超微粉砕した木質バイオマスに化学的・物理的な処理を加えると、リグノフェノールやセルロースなどの高分子材料を抽出できる。これらの有用成分を、バイオエタノールやバイオプラスチックの原料として活用する研究が進められている。

 石油製品の代替品として普及させることは国内のエネルギー問題の解決に、化石資源の使用を減らすことは地球温暖化の防止につながる。また、木質バイオマスの活用は日本の林業の復活、国土保全にも役立つ。カーボンニュートラルな素材の開発と普及は、一石二鳥以上の多大な成果をもたらすことが期待できるのだ。

 木を随所に活用する生活は工夫次第で可能だ。軽く丈夫で土に還る、夢のような車体を持つエコカーの製造さえ実現可能かもしれない。その夢の実現のために、基地の周辺にバイオ関連企業などを誘致し、この地に工業団地をつくる用意もあるという。未開発の技術に挑み、木を無駄なく最後の成分まで使い切るためには、産官学民からさまざまな協力を得て知恵を寄せ合う必要があるからだ。

 「企業には、国内にある資源を使いこなす気持ちで、木質に関する研究努力をもっともっとして欲しい」

 バイオマス集積基地をつくり、両手を広げて待っている山村からの熱いメッセージである。

記事出典:日経BP環境経営フォーラム





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