◇ペレット利用の「排出枠」が森のビジネスを後押し
このペレットの環境価値を「排出枠」として取引するという取り組みも始まっています。
林野庁では昨年10月、約5億円の予算を組んで「山村再生支援センター」(仮称)を創設。ペレットなどの木質バイオマスを使うことによって削減されたCO2排出量を「排出枠」として、都市部の大企業などに売買する仕組みを支援する構想を発表しました。
その一つの具体例とも言えるのが、長野県伊那市のNPO法人「森のライフスタイル研究所」が提案するペレットを利用したカーボンオフセットのシステム。長野県の間伐材を使ったペレットを使うことで減らしたCO2削減の排出枠をクレジット化して、東京などの企業に販売します。購入した企業は、自社の排出削減の目標を達成するために「排出枠」を購入しオフセットします。
そのことで得られた利益のうちから、ペレット利用者にも一部を還元し、使う人のコスト負担を減らしメリットを出そうという試みです。
発案者でもある同研究所の代表理事所長、竹垣英信さんは「ペレットを使う人にも何かインセンティブがあるようにしたかった」とその理由を説明します。
「例えば年間1トンペレットを使う人だったら、約10%の5千円くらいを還元できるようにしたい。そして排出枠を購入した都会の人たちにも、森林整備に参加してもらったり、地元の温泉クーポンをあげたり、実際に山村と交流するきっかけになればと思います」
確かに、ペレット利用が単なる排出量取引だけでなく、使う人と作る人の交流につながれば、本当の意味での新しい「森のビジネス」が生まれるように思います。ペレットを通して、都心に拠点を置く企業や人が山への関心を深めることにもつながります。
一方、岩手県盛岡市のペレットストーブメーカー石村工業では、農家のビニールハウス向けに専用ペレットストーブを開発し、販売を始めました。青森県ではりんごのせん定枝からペレットを作る試みがスタートしています。
これらの地域でも木質ペレットの「排出枠」ビジネスを有効活用すれば、農作物そのものにも付加価値をつけられる可能性があります。利用の仕方によっては、今後の木質ペレット利用は「森のビジネス」活性化の切り札の一つになるかもしれません。
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