2010年1月15日金曜日

■外国資本から日本の森を守ろう

東京財団から政策提言があります。座長は男鹿の一の目潟の「年縞(ねんこう)」調査で、秋田県にゆかりの安田喜憲先生です。
「日本の水源林の危機」
~グローバル資本の参入から「森と水の循環」を守るには~




【要 旨】
グローバル資本による天然資源の買収が世界的に拡大している。なかでも我が国で
は、水資源の源である森林において、内外の民間資本による売買が進みつつある。こ
うした動きは現時点ではまだ表面化していないものの、関係者の間では様々な事例が
話題に上っている。2008年には、例えば三重県などの大規模山林で海外資本から
の買収交渉の話がきかれた。こうした売買の背景には、戦後、植林された立木が40
年~50年経過し収穫期に入っていることや、今後の世界的な水資源問題を見越して
ビジネスチャンスとしての水源林購入目的などがあると考えられる。
我が国の林業は、国際的な価格競争のなか長期にわたって低迷が続いた結果、植林
放棄や不当に安い林地価格が大きな問題となっている。森林法による現行の監督制度
も自治体において実際には十分機能していない点も多い。総合的な地下水のかん養と
利用について規定した法律もない。
ルール整備が不十分な中でこうした森林売買が進行すれば、国として自国の森林資
源や水資源を管理することが困難となり、国土保全や国民生活の安定の上で、大きな
影響を受けることが予想される。
林業経営の見通しが立たず土地を手放したいと考える森林所有者が増える傾向にあ
る中、林地の所有メリットをトータルで考えた民間資本が、安価な森林の購入を進め
るのは、ごく自然な経済活動である。しかし、森林とは我々の水源であり、災害防備
など様々な公益的機能を持つ国の基本インフラだ。国土保全のためには、市場経済に
おける短期的利益の追求を前提としつつも、長期的な国益の視点に立ったルール整備
が不可欠である。
我が国は国土の67%を森林が占める世界有数の森林国である。縄文の昔より、日
本人の命と暮らしは、「森と水の循環」に根ざした自然環境に支えられ続けてきた。貨
幣換算では測り知れない価値をもつその森林が、いま「買い」だと目されている。日
本の森林資源を適切に管理するため、重要水源林の売買ルールなどの制度整備と林業
再生を早急に図らなければならない。
提言1.土地利用規制の見直し
提言2.重要水源林保護のためのゾーニング
提言3.売買規制の見直し――国土法等による新たな林地売買規制
提言4.重要水源林の所有・管理・費用負担の見直し
提言5.新たな森林管理主体の育成
提言6.森林・林業に携わる人材の育成



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

0 件のコメント: